てらterra

『賢者の智慧の書』著者・大竹稽の連載がスタートしました 第三回

「命」と関わり続けるモラリスト(第 3 回)

先ほど、私自身痛みや苦しみがきっかけとなり、命と付き合いながら哲学をしてきたというお話をしましたが、モラリストの思考の根底にあるのはやはり「死」なんです。超理性主義者であるデカルトは、自分の知性・理性を完璧にしていけば観念と一体化できると考えていましたが、パスカルは違いました。彼は人間の弱さを認めていたのです。そのうえで、死ぬからこそ生の尊厳がうまれる、ということを彼は言い続けてきたのです。

デカルトとパスカルの考え方の違いは、「心臓」と「命」の違いを例に挙げるとわかりやすくなります。どちらも人間の「生」と関係しますが、「心臓」はグラムで測り数えることができますが、「命」は測ることも数えることもできません。「心臓」を体の機能として説明することはできますが、「命」は説明がつきません。

要は、数えられないものやどうしても説明がつかないものと関わり続けたのがパスカルなんです。

最終的にパスカルは、哲学をバカにすることが哲学だと豪語し大顰蹙を買ってしまうのですが、私にはその意味がなんとなくわかります。学問として哲学を学ぶうえでは、カントの純粋理性批判を学ぶことも大切ですが、これは話すほうも聞くほうも眠たくなってしまってつまらない。しかしパスカルは、私自身話していて面白いのです。モラリストの言葉からは、彼らがどれだけ人生で悩み、苦しんできたかが伝わってくるからなのでしょう。