てらterra

『賢者の智慧の書』著者・大竹稽の連載がスタートしました 第二回

戦いの中で生きるモラリスト(第 2 回)

基本的にモラリストと言われる人たちは、何かしらの戦いの中で生きています。たとえば、第二次世界大戦中、モラリストはレジスタンスに加わったり、現代のモラリストもかなりハードな体験をしている人が多いのです。

パスカルは、幼少期から体が弱かったようで、18歳で発病しました。常に頭痛と腹痛に悩まされ、最終的には全身が病巣に侵されて、末期ガンで39歳の若さで亡くなっています。つまり、病気との闘いこそが、パスカルの人生だったのです。彼は死と関わり続けることで命の重要さに気づき、哲学し続ける人生を送ったのでしょう。

パスカルは、人は理性だけではどうにもならない部分があると考えていました。「人間はなぜ生まれてきたのか?」という問いかけに、理性は答えてくれるのだろうか──彼は、そう疑問を投げかけています。

そもそも、モラリストの祖であるモンテーニュは、カトリックとプロテスタントが血みどろの戦いをしているアンリ4世の時代を生き抜いた人です。その流れは、パスカル、ロシュフコー、ブリュイエ―ル、そして現代にも脈々と続いています。

実は、私が哲学を学ぶきっかけは、母親による厳しい躾でした。母親がもってくる木刀で叩かれながら躾をうけていたのです。今なら、ドメスティックバイオレンスと言われたかもしれません。小学校時代から、中学生になっても、そうした母親との戦いの中で生きていました。今となっては笑い話ですが「もう死んだ方がいい」と思ったときもありました。こうした、戦いと苦しみ、痛みの中で、私は、自分の命とつきあいながら哲学をしてきたように思います。