てらterra

『賢者の智慧の書』著者・大竹稽の連載がスタートしました

https://www.d21.co.jp/news/authors/20160318-1

 

 

私は「モラリスト」でありたい(第 1 回)

私は「哲学者」や「思想家」という肩書きでご紹介いただくことが多いのですが、自分自身としては「モラリスト」という立場でいたいと思っています。

では、モラリストと哲学者はどう違うのでしょうか?

私の著書 『賢者の智慧の書』 はパスカル、ラ・ロシュフコー、ラ・ブリュイエールという3人の言葉を抄訳したものですが、この3人の共通点はモラリストであることです。

モラリストとは、ひと言でいえば“日常的に哲学している人”です。誰かが考えた哲学を学んで、学んだことを誰かに知識として伝えるのではなくて、自分自身の人生、体験、実感…そういったものから生まれる熱い気持ちを伝えるのがモラリストなのです。

たとえば、医者に「炭水化物は太るから控えるように」と言われても、ついつい「明日おにぎり食べたいなあ」と思ってしまう。これは私自身の例ですが、なぜか人間は、わけのわからない不条理を実行してしまうものです。パスカルたちモラリストは、こうした不条理や謎から、哲学を始めています。

カントやデカルトといった哲学者は、ストイックな超理性主義という立場です。彼らは、理性があれば人間の変な欲求は全てコントロールできると考えます。「お前、医者に太るからおにぎり食うなっていわれたら食うなよ」というのが哲学者なんです。

「だって食べたいじゃん、おにぎりおいしいし…」「太るって言われても、お米食べたいもの」というように考える僕は、つまりパスカル派なのです。

哲学者とモラリストのどちらが正しいのか、ということを言いたいのではなく、これはもうどっちもあっていいのです。カントやデカルトという哲学者のおかげで、哲学は作られていって、世の中の仕組みが分かってきました。ただ、私自身は『賢者と智慧の書』で紹介したモラリストに近い活動をしているほうが、心が落ち着きます。